老前破産とは?年金支給開始年齢引き上げ70歳75歳で起こる恐怖?!
2018/01/18
目次
先日、蕎麦屋で昼飯を食べに行った時、週刊ポスト2017年8月18・25日号を読んでいたんですね。
その中で、気になった記事がありました。
『「年金75歳受給開始」なら国民は「老前破産」に追い込まれる。』という記事です。
「老前破産」!?老後破産なら聞いたことあるけど老前破産ってなんでしょうね。
何やら穏やかでない内容のようなので、つい読み入ってしまいました。
記事の趣旨をかいつまんで説明しますね。
老前破産とは?
政府は内閣府の有識者会議「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」で年金受給開始年齢の「75歳選択制」を盛り込み、年内に閣議決定する方針を打ち出した。
また、自民党の政策提言に〈65歳から74歳までは「シルバー世代」として、本人が希望する限りフルに働ける環境を整備し、「支え手」に回っていただける社会の構築を目指す〉と記されている。
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総務省の「家計調査(2016年)」によれば、高齢者の1ヶ月の平均生活費(2人以上世帯)は、60代後半の世帯で約27万円、70代前半世帯で約25万円。
単純計算で、65歳~74歳までの10年間で、(27万円x12ヵ月x5年)+(25万円x12ヵ月x5年)=3120万円と3000万円を超える生活費が必要である。
年金の受給開始と退職年齢の間の空白期間つまり「無年金期間」が広がれば、働いて収入を確保する必要が出てくる。
国税庁の民間給与実態統計調査によれば、再雇用・雇用延長された65~69歳の平均月収は30万500円で、現役時代の約4割減である。
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それでもまだ再雇用されれば恵まれているが、アルバイトやパートに転職した場合は月収10万円というケースも少なくない。
収入が減るだけでならまだいいが、社会保険料や所得税・住民税、年金保険料も徴収といった負担を強いられ続けることになる。
年金支給年齢が引き上げられれば、本来なら年金を受給できる年齢なのに、年金の払い手になることになる。
また、年金をもらう側になっても、年金額が少なくて働けば、「在職老齢年金」が適用され、年金の一部または全額がカットされる。
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そもそも年金の受給権は、国に預けた保険料を老後に受け取る加入者の「権利」であり、収入があるかどうかととは無関係のはず。
政府はいかにして年金を払わなくて済むか、どうすれば保険料を多く取り立てることができるかを画策している。
「年金75歳受給開始」となれば、国民はいつまでも“年金を受け取れる高齢者”と認められないまま、「老前破産」に追い込まれていく。
つまり、「老前破産」とは年金を受け取れる年齢になる前に破産に追い込まれることを意味する。
そして、年金支給開始年齢が引き上げられ、「無年金期間」が広がれば、定年退職後に迎えるであろう次の4つの具体的問題に「老前破産」の危険性をはらんでいるということです。
Sponsored Link住宅ローン破産
国土交通省の住宅市場動向調査(2016年)によると住宅を取得したときの平均年齢があり、分譲マンションを取得した人が43.3歳、分譲戸建て住宅で38.9歳、中古マンションで46.0歳となっている。
また、住宅金融支援機構の「民間住宅ローンの貸出動向調査結果(2016年)」によると、住宅ローンの平均返済年数は24.5年。
これらによると返済が終わる人は、分譲マンションを取得した人43.3歳+24.5年=67.8歳、分譲戸建て住宅で38.9歳+24.5年=63.4歳、中古マンションで46.0歳+24.5年=70.5歳ということになってしまいます。
このことは、65歳を超えても住宅ローンの返済が終わらない人が相当数いることを意味します。
つまり、年金がもらえなくなって、収入が激減する65歳以上になれば、住宅ローン返済が厳しくなり、場合によっては自己破産しなければならなくなり差し押さえられてしまう危険性がある。
老人ホーム破産
「全国有料老人ホーム協会の調査(2014年度)」によると、老人ホームの「入居一時金」を全額前払した場合の平均は約2000万円。
さらに居住費、管理費などを含む「月額」の平均は24万7000円。
入居一時金を退職金などで支払い、あとは月額を年金で払い続けるパターン。
これまでは、年金の平均月額が約22万円なので、毎月3万円の持ち出し(預金などから)でなんとか死ぬまで入居できた。
ところが、70歳とか75歳まで支給開始年齢がずれれば、月に25万円弱の持ち出しが必要になる。
さらに月額費用以外にも、洗濯代1カゴ500円、ナースコール1回50円、通信費、健康診断、リネン交換などの追加費用も発生し、どんどんお金が加算でゆく。
医療費破産
定年退職前後には、新たに健康保険入る必要があり、無職の場合は国民健康保険に入ることになり、無年金ならば保険料は貯蓄などから自己負担することになる。
健康保険には、高額療養費制度があり負担を軽減できるはずだが、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によれば、60歳代で入院した患者の自己負担額は、高額医療費制度を使用しても、平均21万7000円だそうです。
これは、高額療養費制度の適用外である差額ベッド代(1日あたり1万2000円~4万円台)や日用品代などの雑費、タクシー代や松葉杖などの代金がかかるからである。
年金をもらっていても厳しいのに、無年金になりこれを自己負担するということはかなり厳しい状況に追い込まれることになります。
介護破産
生命保険文化センターが介護経験者に行った調査(2015年)によると、介護を行った平均期間は59.1ヵ月(4年11ヵ月)で、月々にかかった費用の平均は7.9万円。
さらに介護にを始めるため、自宅の増改築やや介護用ベッドの購入などの一時的な費用の平均が80万円。
それらを計算すると、7.9万円x59.1ヵ月+80万円=546.89万円となり、自己負担合計額は約546万円となる。
さらに、痰の吸引やインスリン注射など、ヘルパーで対応できない医療行為が必要な場合、看護師を呼ぶことになり、ヘルパーと比較して1時間あたりの費用が約6000円も高くなる。
こうなれば、介護保険で賄える金額をオーバーして自己負担になることもある。
70歳とか75歳受給が導入されて、無年金、無収入のときに家族が要介護にれば、生活破綻の可能性が高まります。
まとめ
「老前破産」についてかいつまんで記載しましたが、いかがでしょうか?
私はぞっとしたというのが正直なところです。
週刊誌の記事ですから、不安を煽るという傾向は多少あるかもわかりませんが、それぞれの問題が「無年金期間」が長くなることによって、起こり得る問題に感じたからです。
↓こちらの記事でも触れていますが、厚生労働省が検証した財政検証結果からでも様々なオプションが検討されています。
高齢者の定義年齢見直しで年金支給開始年齢の引き上げの可能性は?財政検証結果から考えてみた
それは具体的に、①年金支給額を少なくする、②適用者の範囲を広げて年金保険料を収める人を増やす、③年金支給開始年齢を引き上げるという方向性で、もう年金制度はこのままでは運営できないことを意味しています。
「年金75歳受給開始」というのは、いかにして年金を払わなくて済むか、どうすれば保険料を多く取り立てることができるかを考えるオプションのうちの一つに過ぎない気がするからです。
あまり悲観しすぎてもいけないかもわかりませんが、日本の国がこれからどうなりそうなのかを現実として受け止め、自分のできる範囲で準備しておかないといけない時代ではないでしょうか。
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