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同日得喪とは?社会保険料で損しない?役員も有利?

      2020/01/13

目次

社会保険の資格取得と喪失

社会保険に加入して被保険者となることを「資格取得」といいます。

社会保険制度のある会社に入社すると、入社日当日に被保険者となり健康保険で病院に受診できます。

企業から退職すると、退職日の翌日に「資格喪失」となり被保険者ではなくなります。

同日得喪とは?

「同日得喪」ってあまり聞き慣れない言葉ですよね。

読み方は「どうじつとくそう」と読むんですが、「同日得喪」とはいったい何が同日なのか?

それは社会保険の資格取得と資格喪失が同日であるということです。

これは定年退職するときに憶えておくといい制度です。

昨今は高年齢者雇用安定法の改正によって継続雇用制度が多くの企業に浸透しています。

その効果もあって、60歳以上の労働者は雇用者全体の20%近くに達しています。

このことは企業全体の労働者の平均して20%くらいがが60歳以上ということにもなります。

したがって60歳で定年退職して同じ企業に継続して再雇用されるという人も少なくないと思いますが、その場合、一旦退職という形をとって改めて雇用契約を結び直すことになると思います。

たいていの場合、給料がかなり下がるケースがほとんどでしょう。

ところが何もしないでおくと、給料は安くなっても、社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)はすぐに下がりません。

このようなときの対応として、社会保険の同日得喪という制度があります。

社会保険の同日得喪は以前は「定年退職の場合に限る」とされていましたが、2010年の改正され「60歳から64歳までの老齢厚生年金の受給権を有する人」が以下の場合などでも同日得喪の対象となります。

  • 定年退職後に有期契約で継続雇用された場合
  • 定年に達する前に退職して再雇用される場合
  • 定年制のない会社で退職後再雇用される場合
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社会保険料は「標準報酬月額」を基準に料率をかけて計算されて、事業主と雇用者が半分ずつ負担しています。

標準報酬月額とは、基本給、役付手当、通勤手当、残業手当などの各種手当を加えた1ケ月の総支給額で、通常は年1回、4月・5月・6月の3ヵ月分の平均額で計算されます。(定時決定)

また、固定給の大幅な変更があった場合(標準報酬月額表の2等級以上)に3ヶ月の月平均で改定(随時改定)されますが、3ヶ月間は給料は下っても、それまでの高い保険料(3ヵ月分の平均額)が適用されてしまいます。

ところが、同日得喪の続きをすれば、退職の翌月からすぐに保険料を安くできるというわけです。

同日得喪した場合の社会保険料計算

たとえば、60歳を迎える前までは標準報酬月額35万円の給料をもらっていたけど、定年退職して6月に再雇用後25万円に減ったとします。

↓各都道府県によってちがいますが東京都の場合で計算します。

東京都の標準報酬月額表

表から標準報酬月額35万円の場合、健康保険25等級・厚生年金保険22等級の360,000円で計算されます。

その場合の社会保険料は、健康保険料17,820円、介護保険料2,826円、厚生年金保険料32,940円で合計53,586円の社会保険料になります。

標準報酬月額35万円の場合、健康保険料12,870円、介護保険料2,041円、厚生年金保険料23,790円で合計38,701円の社会保険料です。

同日得喪の続きをすれば、6月から38,701円の社会保険料で済みますが、何もしなければ、3ヶ月間53,586円の社会保険料になります。

つまり、何もしなければ、

53,586円38,701円)x3ヶ月=44,655円

となり、44,655円も高い保険料を払うことになります。

 標準報酬月額健康保険料介護保険料厚生年金保険料
何もしない同日得喪する何もしない同日得喪する何もしない同日得喪する
3月35万円17,82017,8202,8262,82632,94032,940
4月35万円17,82017,8202,8262,82632,94032,940
5月35万円17,82017,8202,8262,82632,94032,940
6月25万円17,82012,8702,8262,04132,94023,790
7月25万円17,82012,8702,8262,04132,94023,790
8月25万円17,82012,8702,8262,04132,94023,790
9月25万円12,87012,8702,0412,04123,79023,790
10月25万円12,87012,8702,0412,04123,79023,790

事業主と折半ですから、自分の負担は44,655円÷2 の 22,327円でいいかもしれませんが、できるだけ損はしたくありませんよね。

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同日得喪は在職老齢年金にも影響

また、年金を受給している場合、給与(ボーナス含む)と年金の月額がある一定額を超えると、老齢厚生年金が減額される在職老齢年金制度にも同日得喪は有効です。

在職老齢年金は、60歳から64歳までは月額28万円、65歳からは月額46万円を超えると年金が減額されます。

年金減額

上の例のように、60歳定年退職前が標準報酬月額35万円、再雇用後25万円で、仮に老齢厚生年金月額10万円を受給するとしたら、年金減額は35万円の場合は-85,000円、25万円の場合は-35,000円ですから、

(85,000円-35,000円)x3ヶ月=150,000円

15万円の差がついてしまいます。

ちなみに、減額計算は下記のとおりです。

60歳から64歳

年金(老齢厚生年金)の月額
    +
給与(総報酬月額相当額)の合計

総報酬月額相当額年金月額減額計算
28万円以下  減額なし(全額支給)
28万円超46万円以下28万円以下(総報酬月額相当額+年金月額-28万円)×1/2
46万円超28万円以下(46万円+年金月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-46万円)
46万円以下28万円超総報酬月額相当額×1/2
46万円超28万円超46万円×1/2+(総報酬月額相当額-467万円)

 

↓こちらでシミュレーションできます。

在職老齢年金減額計算!給料と年金をシミュレーション

でも、今50代で60歳から老齢厚生年金をもらえる人(生年月日が、男性:昭和24年4月2日~昭和28年4月1日、女性:昭和29年4月2日~昭和33年4月1日)はそんなに多くないでしょうね。

年金受給開始年齢一覧早見表、年金はいつからもらえるのか?

まぁ定年延長で65歳まで定年退職が延びた場合は、老齢厚生年金を受給することになりますから別でしょうけど。

65歳以上

ただ、65歳以上となると、上の例でいけば、総報酬月額+老齢厚生年金月額が、35万円+10万円は45万円で、46万円以下の場合は減額なしですから、老齢厚生年金は全額支給で変わりません。

年金(老齢厚生年金)の月額
    +
給与(総報酬月額相当額)の合計
減額計算
46万円以下減額なし(全額支給)
46万円超(総報酬月額相当額+年金月額-46万円)×1/2

総報酬月額+老齢厚生年金月額が46万円を超える場合に影響してきます。

同日得喪は役員に有効?

同日得喪は、従業員だけでなく、法人役員(老齢厚生年金に加入)にも適用されます。

役員の場合、退任して嘱託などになって、給与が大幅に下がるケースでもままあるでしょう。

そんな場合、従業員よりも、給与の変動額が大きいことが多く、差額が大きければ大きいほど有効になるというわけですね。

同日得喪の条件

同日得喪申請をするのに必要な条件は、1日も空くことなく同じ会社に再雇用されることです。

つまり、資格喪失と同時に取得の手続をするということになります。

パートタイマーやアルバイトなどで厚生年金保険等の被保険者となっている場合も対象となります。

また、定年退職以外の理由で再雇用された場合でもOKですし、1人1回きりではなく、再契約がされるたびに申請ができます。

同日得喪の手続き

同日得喪申請の期限

同日得喪申請の手続きは、定年日の翌日から5日以内に必要な書類を添付して行います。

同日得喪に必要な添付書類

  1. 社会保険被保険者資格喪失届
  2. 社会保険被保険者資格取得届
  3. 退職日が確認可能な書類(社内の就業規則において定年について記載された箇所の写し)
  4. 再雇用時の雇用契約書の写しまたは事業主の証明(事業主印が必要)
  5. 従前の保険証(一旦社会保険の資格を喪失するので、今まで使っていた保険証を提出し、新しい保険証の交付を受けます。被扶養者分も必要です。)

これらの書類等を年金事務所(会社が健康保険組合に加入している場合は健康保険組合)に提出します。

同日得喪のデメリット

同日得喪は、厚生年金額はもちろん、健康保険の傷病手当額(標準報酬月額により計算)も変更され、傷病手当金も減少しますので注意が必要です。

まとめ

このように同日得喪申請を行うことによって、社会保険料や在職老齢年金の減額を少なくすることができます。

退職後の給与の差額が大きければ大きいほど有効ということになります。

たとえ少額でも損しないように、とにかく、退職したら同日得喪申請を頭においておきましょう。

まぁしっかりした会社なら、大抵は担当者が知っていて手続きしてくれるでしょう。

社会保険料を折半しているので、雇用者にも従業員にもメリットがありますからね。

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