65歳定年退職で失業保険と年金を併給する裏技?停止を避けるためには?
2019/02/25
目次
定年退職というと、60歳が定年退職という会社が多いですが、定年を65歳まで引き上げている会社も徐々に増えてきました。
実際には60歳の定年後は会社が「本人が希望すれば65歳まで働くことができる」という継続雇用制度を設けていることが多いでしょう。
その中で、63歳とか64歳とか65歳前に退職する人もいれば、65歳まで働き、65歳で退職すると考えている人もいると思います。
しかし、60歳で定年退職しても、年金だけの生活では心もとないので、65歳まで継続雇用で働く人は多いのではないでしょうか?
65歳まで継続雇用で働き退職する場合、知っておいたほうがいいことがあります。
それは、失業保険と年金についてです。
退職後も新たな職場で働くという場合は、就職が決まるまでは失業保険のお世話になることになります。
しかし、失業手当をもらうと、年金がカットされることがあるからです。
失業保険と年金の関係
俗に言う失業保険とか失業手当といわれる「雇用保険の失業給付」と関係してくるのは、60代前半(60歳から64歳)で受給できる「特別支給の老齢厚生年金」です。
そこで、この特別支給の老齢厚生年金ですが、注意しないといけないのが、退職して雇用保険の失業給付を受給している間は全額カットで支給停止になることです。
出典:http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-03.html
ただし、年金カットされるのは、60歳から64歳までの特別支給の老齢厚生年金だけで、65歳以降の老齢厚生年金については、雇用保険の失業給付を受給しても年金カットはありません。
したがって、注意しないといけないのは65歳になる前に退職して失業手当を受け取る場合です。
特別支給の老齢厚生年金は、男性の1961(昭和36)年4月1日生まれまで(~63歳)、女性の1966(昭和41)年4月1日生まれまで(~58歳)の人が受給できます。
それ以降が誕生日の人は、一律65歳からしか年金は受給できませんので、該当しないことになります。
参考記事→ 年金受給開始年齢一覧早見表、年金はいつからもらえるのか?
ですが、該当しない人も憶えておいておいたほうがいいことがあります。
それは、失業手当の給付日数についてです。
Sponsored Link失業手当の65歳未満と65歳以上の給付日数のちがい
失業手当(雇用保険の失業給付)を受給できる日数(給付日数)は、雇用保険加入期間(被保険者であった期間)や年齢によってちがいます。
雇用保険加入期間と給付日数の関係を以下の表で示します。
65歳未満でもらえる失業手当を「基本手当」、65歳以降にもらえる失業手当を「高年齢求職者給付金」といいます。
失業手当【65歳未満】:基本手当
雇用保険加入期間(被保険者であった期間) | 給付日数 |
10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
失業手当【65歳以上】:高年齢求職者給付金
雇用保険加入期間(被保険者であった期間) | 給付日数 |
6ヶ月以上1年未満 | 30日 |
1年以上 | 50日 |
このように、65歳未満の基本手当は90日~150日、65歳以上の高年齢求職者給付金は30日~50日となっていますので、失業手当は65歳未満で退職したほうが多くもらえる事になります。
60歳で定年退職を迎える人は20年以上勤務して、雇用保険に20年以上加入している人がほとんどでしょう。
20年以上加入の場合、失業手当の給付日数は、65歳未満で150日、65歳以上で50日となり、100日分も差があります。
20年以上加入で、退職前の6ヵ月間、月給30万円であった人が受け取れる失業手当の日額は4,868円ですから、4,868円x100日=486,800円、50万円近くの差になってきます。
参考記事→ 定年退職後の失業保険はいくらもらえる? 金額計算シミュレーション
これは、年金が主な収入となった場合は、少なくない金額ですよね。
ところが、65歳未満で受給できる特別支給の老齢厚生年金はカットされるという問題があります。
失業手当の認定日は28日毎にあり、その都度口座に振り込まれるかたちですから、65歳未満で基本手当を最大150日受給した場合、単純計算で約5ヵ月分の年金がカットされることになります。
65歳未満で退職するほうが、失業手当は多くもらえるが、年金はカットされる。
継続雇用で65歳直前まで働いた場合、65歳前に退職したほうがいいのか?65歳になってから退職したほうがいいのか?
特別支給の老齢厚生年金もカットされず、失業手当も多くもらえる裏技?をご紹介します。
65歳定年退職で失業保険と年金を併給する裏技?
下の図を見て下さい。
60歳~64歳で退職する場合、失業手当は90日~150日もらえますが、特別支給の老齢厚生年金はカットされます。
(※特別支給の老齢厚生年金については、繰り下げ支給制度は適用されません。)
65歳以降に退職する場合、特別支給の老齢厚生年金はカットされませんが、失業手当は30日~50日となってしまいます。
裏技(というか正当な方法ですが)は65歳の直前、誕生日の前々日(※)までに退職し、離職票が届くのを待ち、それからハローワークへ行けば、手続きにも時間がかかり、実際に基本手当をもらいはじめるのは、65歳以降になりますから、失業手当も90日~150日受給でき、年金もカットされません。
※なぜ誕生日の前々日かというと、年齢の数え方は「誕生日の前日で満年齢に達する」と雇用保険法で定めているためです。たとえば、1961年4月1日生まれの人は、2026年3月31日の時点で満65歳に達したとみなされ、高年齢求職者給付金の対象になり30日~50日分しか給付金を受け取れません。しかし、1日早く2026年3月30日に退職した場合は、64歳とみなされ、基本手当の対象となり90日~150日分受け取れます。
このことは、特別支給の老齢厚生年金をもらえない人でも、憶えておいたほうがいいでしょう。
ただし、就業規則などで定年退職日が「65歳の誕生日」とか「65歳の誕生日の前日」と定められている場合は、誕生日の前々日に退職すると、定年前の退職となり「自己都合」による離職とされます。
その場合、原則として3ヵ月の給付制限がつき、基本手当の支給を受ける時期が3ヵ月遅れることになります。
しかし、受け取る額が減ることにはなりませんので、急にお金が必要でない限り、問題ないでしょう。
ただし、退職日を早めた場合、会社の退職金制度によっては、退職金の算定に影響が出る可能性もありますので、よく確認しておきましょう。
まとめ
まとめると、65歳直前まで働き定年退職する場合、
65歳前の特別支給の老齢厚生年金を受給できる人(男性の1961(昭和36)年4月1日生まれまで(~63歳)、女性の1966(昭和41)年4月1日生まれまで(~58歳))も、受給できない人も、65歳の直前、誕生日の前々日までに退職し、基本手当を90日~150日分受け取ったほうがお得ということです。
65歳以降に支給される老齢厚生年金は、失業手当(基本手当)を受け取ってもカットされることはありません。
年金や雇用保険などの制度が変わらなければそういうことですので、65歳まで頭の片隅に置いておきましょう。
今回の内容は、このブログを読んでくださっている読者さんからのお問い合わせがきっかけで知ることができました。
ありがとうございました。
こういった細かいことを知っていくことによって、少しでも老後資金の足しになればいいですからね。
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