自営業(個人事業主)の老後の備え!iDeCo・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済を比較してみた
2018/03/20
目次
自営業の老後の備えは?
「マンガ 自営業の老後」という本が売れているらしい。
内容は 自営業(イラストレーター)である著者が、自営業でどのような老後を過ごしている人たちがいるかを取材したり、どう対策をとるべきかを専門家に聞いていくというものです。
確かに個人事業主や自営業の人は不安がつきまとうもの。
よく、「自営業だから定年がないから老後もいいでしょ。」という言葉も耳にしますが、それは仕事がそのまま順調であることと、自分が健康で働けることが前提になってくるわけです。
もし、仕事がなくなったり、健康を崩して働けなくなったとしたら、老後に頼るのはそれまでの貯蓄などの資産や、年金ということになってきます。
ところが、自営業の年金は一般的に国民年金のみで厚生年金などの上乗せはありません。
2017年4月の段階で国民年金の保険料は月額16,490円で、もらえる年金は64,941円となっています。
老後になって1ヵ月64,941円の収入だけではとても暮らせませんし、将来的にはもっと受給額が減る可能性もあります。
そんな不安な自営業の老後に打つべき対策はというと、保険屋さんのすすめる個人年金保険などもありますが、そのまえに検討してみる価値のある制度があります。
それは、iDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金・付加年金(国民年金の増額)・小規模企業共済です。
これらの良いところは、将来年金代わりにお金がもらえるだけでなく、掛金の全額が所得控除の対象になることです。
個人年金保険などは保険料控除で所得税・住民税合わせて最高年間6.8万円ですから、全額が所得控除ということは結構大きいわけです。
それらの計算は記事の最後に記載しますね。
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iDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済が有利なのはわかったけど、どう違うのかわかりにくかったので、一覧表にまとめてみました。
iDeCo・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済比較表
項目 | iDeCo (確定拠出年金) | 国民年金基金 | 付加年金 | 小規模企業共済 |
加入資格 | 20歳以上60歳未満 | ・日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者とその家族 ・自由業、学生などの国民年金の第1号被保険者および60歳以上65歳未満の方や海外に居住している人 | ・自営業者 ・自分で国民年金保険料を納付している人 | ・建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員または共同経営者 ・商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員または共同経営者 ・組合員の数が20人以下の企業組合の役員や協業組合の役員 ・従業員の数が20人以下の農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員 ・従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員 |
掛金月額 | 5,000円〜68,000円(1000円単位) | 6,180円〜68,000円 | 400円 | 1,000円〜70,000円(500円単位) |
併用する場合は、合計金額の上限が68,000円 (国民年金基金と付加年金の併用は不可) | 他3つとの併用可 | |||
所得控除 | 掛金の全額が所得控除の対象 | |||
小規模企業共済等掛金控除 | 社会保険料控除 | 社会保険料控除 | 小規模企業共済等掛金控除 | |
支払い期間 | 59歳11か月まで | 60歳未満で加入:59歳11か月まで 60歳以上で加入:64歳11か月まで | 59歳11か月まで (任意加入で64歳11か月まで) | 事業継続中満期なし |
途中変更 | ○ 1,000円単位 | 1口目はX 2口目以降は○ | X | ○ 500円単位 |
途中解約 | X (支払い停止は可能) | X | ○ | ○ |
受給開始 | 60歳〜70歳 | 60歳か65歳 | 60歳〜65歳 | 任意の時期に解約手当金を受取り可能 |
受給額 | 運用次第 | プラン次第 | 200円 × 納付した月数 | 掛金納付月数に応じて、掛金の80%~120% |
受給方法 | ・一括 ・終身年金 ・一括・終身併用 | ・終身年金 ・確定年金 | 終身年金 | ・一括 ・分割 ・一括・分割併用 |
国民年金基金と付加年金の併用はできません。
iDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金、iDeCo(確定拠出年金)・付加年金の併用はできますが、合計月額68,000円が上限となります。
小規模企業共済はiDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金・付加年金とも併用できます。
つまり、一番節税効果が高いのは、iDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金・付加年金を組み合わせて月額68,000円払い、小規模企業共済で月額70,000円を払う月額合計138,000円(年間1,656,000)の所得控除ということになります。
もちろんお金に余裕があればの話ですが。
どれくらい節税になるのか?
iDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済などを積み立てると、どれくらい節税になるかというと、掛け金全額が節税になるわけではありません。
私たちは所得から必要経費や所得控除を引いた課税所得に対して所得税と住民税を徴収されています。
所得税率は収入が増えるほど税率が高くなる超過累進課税で、住民税率は一律10%です。
式にすると下記のとおりとなります。
所得税額 = 課税所得 × 税率 – 税額控除額
※ここでは税額控除については割愛します。
住民税額=課税所得 × 10%
まとめて表にしてみました。
課税所得 | 所得税、復興特別所得税の合計税率 | 住民税税率 | 合計税率 | |
都道府県税 | 市区町村税 | |||
195万円以下 | 5.105% | 4% | 6% | 15.105% |
330万円以下 | 10.21% | 20.21% | ||
695万円以下 | 20.42% | 30.42% | ||
900万円以下 | 23.483% | 33.483% | ||
1800万円以下 | 33.693% | 43.693% | ||
1800万円超 | 40.84% | 50.84% |
表の課税所得というのは所得金額から各種所得控除を引いたものです。
課税所得=所得金額 - 所得控除額
所得控除には下記のようなものがあります。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦(寡夫)控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
iDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済を積み立てることによって、社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除に該当するため、課税所得を減らすことができるわけです。
これによっていくらくらい節税できるかというと、、税率表の収入の境に近い人は所得税率も下がる可能性もありますが、ここは単純に下記の式で計算ができます。
掛金額 × 12ヵ月 × 税率% = 節税額
たとえば、課税所得が330万円超~695万円の人は所得税率20.42%、住民税10%で合計税率は30.42%です。
先程の所得控除を最高に使った場合(iDeCo、国民年金基金、付加年金と小規模企業共済の併用=68,000円+70,000円)、月額合計138,000円(年間1,656,000円)の所得控除になりますから
1,656,000円 × 30.42% = 503,755円
年間で503,755円の税金を払わなくてよくなるわけです。
50歳から60歳まで10年間積立てたとすれば、500万円くらい払わなくてもいいわけです。
仮にiDeCo(確定拠出年金)だけで、月額合計68,000円(年間816,000円)だとしても
816,000円 × 30.42% = 248,277円
年間で248,277円、10年間で250万円くらいの節約になるわけです。
※ここでの計算は単純化していて、実際の計算法と違うため節税金額は多少ちがってきます。
これを利息だと考えれば、ヘタに定期預金にするより断然いいと思いませんか?
しかも満期になれば、たとえわずかながらでも年金として受け取れます。
老後資金のことを真剣に考えた場合、iDeCo(確定拠出年金)・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済を検討してみる価値はあると思いますよ。
自営業の人だったら、小規模企業共済はいつでも解約できるのでおすすめだと思います。
【追記】
ただし、小規模企業共済には下記のようなデメリットもあります。
- 加入後240ヵ月(20年)未満で解約すると、元本割れします。
- 掛け金を減額すると、その後減額分については運用されないため利息が付きません。
たとえば、50歳から加入する場合は、70歳前に解約すると元本割れしますから注意して下さい。
読者の方が教えて下さいました。
ありがとうございました。
ちなみに、冒頭で触れた本
↓「マンガ 自営業の老後」はこちらです。
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