国民年金基金のメリット・デメリットとは?破綻リスクは?
目次
国民年金基金とは?
国民年金基金とは、自営業者やフリーランスなど(国民年金の第1号被保険者)の老後の所得保障として設けられた制度です。
サラリーマン(国民年金の第2号被保険者)には厚生年金(老齢厚生年金)や厚生年金基金などの制度があって、国民年金(老齢基礎年金)以外の上乗せがありますが、自営業者やフリーランスなど(国民年金の第1号被保険者)は国民年金のみしか加入していないので、将来の受給額に大きな差がありました。
そこで、この年金額の差を解消するため、国民年金基金制度が平成3年4月に創設されました。
以下、国民年金基金の特徴についてまとめますね。
国民年金基金の給付の種類
- 老齢年金
掛け金に応じた年金を終身に渡って、または一定期間受け取ることができます - 遺族一時金
年金を受け取る前、又は保証期間中に本人が死亡した場合、遺族に一時金が支払われます
国民年金基金給付の型
47都道府県に設立された「地域型基金」と25の職種別に設立された「職能型基金」の2種類があります。
加入は口数制で、何口加入するかによって受け取る年金額が決まります。
掛金の上限は月額68,000円×12=年額816,000円です。
給付の型によって、終身年金A型・B型、確定年金Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型の7種類があります。
1口目から加入(終身型)
- 終身年金A型
65歳~終身まで年金を受給でき、15年間の受取り保証付 - 終身年金B型
65歳~終身まで年金を受給でき、A型よりも掛金を安く、実質的な返戻率はA型よりもお得
15年間の受取り保証無し
2口目以降から加入可能(確定型:有期)
- Ⅰ型
65歳支給開始~80歳まで支給、15年間保証。 - Ⅱ型
65歳支給開始~75歳まで支給、10年間保証。 - Ⅲ型
60歳支給開始~80歳まで支給、15年間保証。 - Ⅳ型
60歳支給開始~70歳まで支給、10年間保証。 - Ⅴ型
60歳支給開始~65歳まで支給、5年間保証。
1口目は、終身年金A型、B型のいずれかを選択することになり、2口目からはA型、B型の他、支給期間が定まっている確定年金のⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型から選択することになります。
保証とは、たとえば15年保証の場合、65歳から80歳までに亡くなったとしても、15年分の年金を受取ることが可能です。
保証期間中に本人が亡くなっても、一時金が受け取れます。
↓実際の掛け金や受給できる年金額はこちらからシミュレーションできます。
Sponsored Link国民年金基金のメリット
- 掛金は全額が所得控除
国民年金基金の掛金は全額社会保険料控除として所得控除されますので、節税効果があります。
どのくらい節税になるかは、下表のように、その人の所得によって違いますが下の式でおおよそ計算できます。
基金掛金額 × 12ヵ月 × 税率% = 節税額課税所得 所得税、復興特別所得税の合計税率 住民税税率 合計税率 都道府県税 市区町村税 195万円以下 5.105% 4% 6% 15.105% 330万円以下 10.21% 20.21% 695万円以下 20.42% 30.42% 900万円以下 23.483% 33.483% 1800万円以下 33.693% 43.693% 1800万円超 40.84% 50.84% たとえば、課税所得(税込み年収-所得控除合計額)が400万円の人が、掛け金の上限、毎月6.8万円の掛け金を掛けていたとすると
6.8万円x12ヵ月x30.42%≒24.82万円
年間約24.82万円の節税効果があるわけです。 - 年金を受け取る時も雑所得の公的年金等控除の対象となる
公的年金等に係る雑所得の金額=(a)×(b)-(c)
年金を受け取る人の年齢 (a)公的年金等の収入金額の合計額 (b)割合 (c)控除額 65歳未満 70万円以下 所得金額は0円 70万円超~130万円未満 100% 700,000円 1,300,000円から4,099,999円まで 75% 375,000円 410万円以上~770万円未満 85% 785,000円 770万円以上 95% 1,555,000円 65歳以上 120万円以下 所得金額は0円 120万円超~330万円未満 100% 1,200,000円 330万円以上~410万円未満 75% 375,000円 410万円以上~770万円未満 85% 785,000円 770万円以上 95% 1,555,000円 たとえば、65歳以上の人で公的年金等の収入金額が400万円の場合には、公的年金等に係る雑所得の金額は次のようになります。
400万円×75%-375,000円=2,625,000円 - 確定給付
給付額が確定しており、物価スライド制に対応していないので、物価が下落した場合は、実質増えるとになる - 万一のときは掛金に応じた遺族一時金が支給される
本人が亡くなっても遺族に加入時の年齢、死亡時の年齢、死亡時までの掛金納付期間に応じた額の一時金が支払われ、非課税となる
国民年金基金のデメリット
- 途中解約(脱退)は基本的に難しい
途中解約はできず、支払を止めても、積み立てたお金は老齢年金として受け取るか、死亡したときに遺族が一時金として受け取ることしかできない - 確定給付
給付額が確定しており、物価スライド制に対応していないので、物価が上昇した場合は、実質目減りすることになる
国民年金基金の破綻リスクは?
厚生年金基金は、運用失敗などにより破綻しており、解散する基金が続出しています。
国民年金基金の破綻リスクはいったいどうなのか?
心配になるところですね。
国民年金基金制度は平成3年のスタート当初は、時代背景もあり予定利率が5.5%と高率だったんですが、バブルも弾け、4.75%(1995年)→4.00%(2000年)→3.00%(2002年)→1.75%(2004年)→1.50%(2014年)と下落の一途をたどっています。
それに伴うように新規加入者の数も減少の一途です。
現状の加入員の年齢構成は、40~49歳が37.5%、50~59歳が45.9%で、合計すると83.4%と40~59歳でほとんどを占めています。
新規加入者は減少して掛け金収入も減っているのに、これから年金受給者が増える傾向にあるということです。
そこで、国民年金基金の財政状態はどうなのかも調べてみました。
現存加入員数の推移
年度 | 年度末現存加入員数 (人) | 新規加入員数 (人) | 予定利率 |
平成3年度 | 436,484 | 459,361 | 5.50% |
平成4年度 | 526,630 | 114,301 | ↓ |
平成5年度 | 583,661 | 83,778 | |
平成6年度 | 674,023 | 113,845 | |
平成7年度 | 698,702 | 68,184 | 4.75% |
平成8年度 | 725,690 | 69,021 | ↓ |
平成9年度 | 718,109 | 49,321 | |
平成10年度 | 725,390 | 53,307 | |
平成11年度 | 768,519 | 85,055 | |
平成12年度 | 764,094 | 50,259 | 4.00% |
平成13年度 | 786,725 | 77,720 | ↓ |
平成14年度 | 771,662 | 40,437 | 3.00% |
平成15年度 | 789,178 | 72,062 | ↓ |
平成16年度 | 751,306 | 23,673 | 1.75% |
平成17年度 | 726,748 | 27,199 | ↓ |
平成18年度 | 692,713 | 27,290 | |
平成19年度 | 648,415 | 26,701 | |
平成20年度 | 614,784 | 29,317 | |
平成21年度 | 577,145 | 22,929 | |
平成22年度 | 547,872 | 26,311 | |
平成23年度 | 521,609 | 24,787 | |
平成24年度 | 493,487 | 20,493 | |
平成25年度 | 481,316 | 32,309 | |
平成26年度 | 453,684 | 20,911 | 1.50% |
平成27年度 | 427,026 | 21,407 | ↓ |
年齢階級別 現存加入員の割合(平成27年度末現在)
基金種類 | 20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~64歳 | 平均年齢 |
地域型基金 | 2.0% | 13.4% | 38.4% | 44.7% | 1.4% | 47.8歳 |
職能型基金 | 1.0% | 11.7% | 33.3% | 51.9% | 2.0% | 49.2歳 |
全基金計 | 1.8% | 13.1% | 37.5% | 45.9% | 1.5% | 48.1歳 |
国民年金基金の財政状態は以下のとおりです。
ここでポイントになるのが、「責任準備金」です。
年金財政の推移
年度 | 純資産額(億円) | 責任準備金(億円) | 実質過不足(億円) | 予定利率 |
18年度 | 29,224 | 29,967 | △743 | 1.75% |
19年度 | 26,561 | 32,213 | △5,652 | ↓ |
20年度 | 21,591 | 35,021 | △13,430 | |
21年度 | 26,181 | 37,062 | △10,881 | |
22年度 | 25,985 | 38,974 | △12,990 | |
23年度 | 26,744 | 41,015 | △14,271 | |
24年度 | 31,424 | 42,910 | △11,487 | |
25年度 | 36,069 | 44,908 | △8,839 | |
26年度 | 41,364 | 46,544 | △5,180 | 1.50% |
27年度 | 38,982 | 47,984 | △9,002 | ↓ |
約束した予定利率で加入者に年金を支払う場合に、理論上必要とされる金額である「責任準備金」を計算すると、純資産額ではまかなえない、積立不足になっています。
責任準備金とは、約束した予定利率で加入者に年金を支払う場合に予測して計算されるものです。
保険会社などでも採用されていますが、おおよそ下記のような概念です。
責任準備金=将来の保険金や給付金の支払(予想給付金)-将来の保険料の収入(予想掛け金)
つまり、純資産額よりも責任準備金が上回っていますので、年金の原資が不足していることになります。
しかし、責任準備金は理論上の金額なので、不足しているから破綻するというものでもないと思われます。
制度変更など、様々な施策が考えれるからです。
今後どうなっていくのか?
以下のようなケースが考えられます。
- 年金の給付額を減らす
年金の支給額を減らして対応(過去に約束した予定利率よりも減らして支給) - 確定拠出型に変更する
現在の確定給付型から、将来の受給額が運用成績に応じて変動する確定拠出型に変更する - 税金の投入
税金を投入して不足額を穴埋め - 賦課方式へ移行
加入者の保険料を年金給付に充てる - 解散
解散は実質上破綻ということになりますが、国民年金法で
「政府は、国民年金基金又は国民年金基金連合会が解散したときは、その解散した日において当該基金等が年金の支給に関する義務を負っている者に係る責任準備金に相当する額を当該基金等から徴収する。」
となっていますから、責任準備金の範囲で積み立てた掛け金は保全されるのではないでしょうか。
生命保険でも責任準備金の90%は保全されますから、それくらいに考えておいたほうがいいかもしれません。
国民年金基金はあくまで、国民年金法で運用される公的年金になりますから、一般の保険会社と比較すれば様々な保全策がとられるのではないでしょうか。
また、今後新規加入率が増加するとは考えにくいので、ポイントになるのは運用実績です。
そこで、国民年金基金のポートフォリオについて調べてみました。
国民年金基金のポートフォリオ
団体 | 国内債券 | 国内株式 | 外国債券 | 外国株式 | その他 |
国民年金基金 | 21% | 16% | 31% | 32% | |
小規模企業共済 | 76% | 5% | 3% | 5% | 11% |
GPIF年金積立金 | 35% | 25% | 15% | 25% |
国民年金基金の他に小規模企業共済、GPIF年金積立金(国民年金・厚生年金)のポートフォリオも比較してみました。
国民年金基金は国内債券や国内株式の割合が37%で、GPIF年金積立金の60%よりも低く、外国債権や外国株式への投資が63%です。
なんとなく不安な感じがしますね。
その点、小規模企業共済は国内債券や国内株式の割合が81%で、安心感がありますね。
私の感じでは、自営業者が老後資金を確保するのは、小規模企業共済がおすすめな気がします。
ただし、国民年金基金と違う点もありますのでまとめてみますね。
特徴 | 小規模企業共済 | 国民年金基金 |
目的 | 経営者の退職金確保 | 老齢年金の上乗せ |
加入できる人 | 個人事業主/法人役員 | 国民年金1号被保険者 |
予定利率 | 1% | 1.5% |
受取方法 | 一括受取/定期年金 | 終身年金/定期年金 |
掛金上限 | 月70,000円 | 月68,000円 |
支給開始 | 退職時/65歳 | 65歳/60歳 |
途中解約 | 可能 | 不可 |
節税効果 | 掛金:全額所得控除 受取金:雑所得の退職所得、公的年金等控除 | 掛金:全額所得控除 受取金:雑所得の公的年金等控除 |
一般貸付 | あり (年1.5%) | なし |
根拠法令 | 小規模企業共済法 | 国民年金法 |
小規模企業共済は国民年金基金と比較して、予定利率が1%と低めですが、途中解約すればお金が戻ってきますし、年金としても一時金としても受け取れ、自由度が高いですから、やはりおすすめですね。
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