日米首脳会談で安倍首相がトランプ大統領に提案する「日米成長雇用イニシアチブ」とは?
2017/02/06
目次
日米成長雇用イニシアチブとは?年金基金をインフラ投資に!?
2月10日にアメリカのワシントンで、安倍首相とトランプ米大統領が日米首脳会談を行う予定になっています。
その折に安倍首相がトランプ大統領に提案する経済協力の原案の内容が、公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金を投入するということで報道されて話題になっています。
その名は「日米成長雇用イニシアチブ」。
内容はトランプ米大統領が重視するインフラへ事業などへの投資を通じ、約51兆円(4500億ドル)の市場を創出し、70万人の雇用を生み出すというもの。
具体策としては、①米国でのインフラ投資、②日米で第三国のインフラ投資、③ロボットや人工知能(AI)分野での日米共同研究、④サイバー攻撃への対処・宇宙空間での協力、⑤雇用や技術を守る政策連携の5本柱。
具体策 | 予算 | 内容 |
米国でのインフラ投資 | 約17兆円 | 高速鉄道や、新規発電所を整備。金融機関の融資のほか公的年金の運用資金などからも投資 |
日米で世界(第三国)のインフラ投資で連携 | 約22兆円 | 民間航空機の共同開発、原発の共同売り込み、アジアのインフラ需要の取り込み |
ロボットと人工知能(AI)の日米共同研究連携 | 約6兆円 | 日本が得意なロボット、米国が強いAIを組み合わせ、原発、医療、自動運転車分野などで研究開発 |
サイバー攻撃への対処・宇宙空間での協力 | 約6兆円 | 同盟国として日米のサイバー防衛力を向上 |
雇用や技術を守る政策連携 | 貿易不均衡の解消、技術や資源の保安で協力 |
特に話題になったのは、「①米国でのインフラ投資」に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金を投入するということ。
GPIFというと、公的年金(国民年金・厚生年金)積立金の約135兆円を使って、国内外債権や株式などの金融商品に投資してを運用している政府の機関です。
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ネット上では批判の声が上がっています。
しかし、すでにGPIFは、日本政策投資銀行(DBJ)及びカナダ・オンタリオ州公務員年金基金(OMERS)と共同投資協定を結び、グローバルなインフラストラクチャーへの投資(インフラ投資)を開始する、と2014年3月に発表しました。
今現在、約800億円規模で海外インフラに投資しているそうですが、約135兆円の資金運用のうち5%まで投資可能で6.75兆円までの枠があるようです。
インフラ投資と言っても、投資信託を購入するというカタチのようですね。
基本ポートフォリオ上は「外国債券」として扱われています。
世界の年金基金ではインフラ投資は広がりを見せており、インフラファンドへの出資総額は20兆円を大幅に超えるそうです。
インフラ投資は、株式市場等と異なり、価格変動の影響を受けにくく、長期にわたって安定した利用料収入が期待されるらしいですが、やはり年金資金だけに不安が残ります。
GPIF高橋理事長と安倍首相は否定
この報道をしたのは、日本経済新聞と朝日新聞ですが、GPIFの高橋則広理事長は「そのような事実はない」「GPIFは、インフラ投資を含め、もっぱら被保険者の利益のため、年金積立金を長期的な観点から運用しており、今後とも、その方針に変わりはありません。なお、政府からの指示によりその運用内容を変更することはありません。」と否定しています。
そして、GPIFのホームページにもコメントを掲載しています。
安倍首相も、2月3日の衆議院予算会議で「政府として検討しているわけではない」GPIFの資金運用については法律に基づいて被保険者の利益のためにGPIFで判断するものなので「そもそも私に指図する権限はないので、(経済協力の)パッケージとしてあり得ない」と否定しています。
とりあえずは一安心というところでしょうが、「日米成長雇用イニシアチブ」の骨子が変わらなければ「①米国でのインフラ投資」が公的年金資金から投資されないだけで、他の予算枠を使うことには変わりはありません。
いずれにしても、投資するからには元を取ってもらわないと、最終的に国民に負担が回ってきます。
どうか慎重に事を運んで欲しいものですね。